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怖いものがちょっと苦手な人にもオススメ~「営繕かるかや怪異譚」 [本]

営繕かるかや怪異譚
小野不由美著「営繕かるかや怪異譚」。オススメである。

昨年,出版と同時に購入してあった,「営繕かるかや怪異譚」を読んだ。言わずと知れた,「十二国記」シリーズの作者,小野不由美さんの最新作である。ファンは彼女を,「先生」ではなく「主上」と呼ぶ...らしい。

この寒い冬の夜に,何を好きこのんで怪談話を読むのか,と言われると,反論の言葉もない。強いて言えば,この時期に出版する出版社が悪いのである。さらに言えば,私は基本的に怖い話は苦手なのだ。夏だからといって,読みたいものでもない。「リング」シリーズと,小野不由美さんの作品でなければ,怪談やホラーは,まず確実に読むはずはない。まぁ,「リング」シリーズは,もはやSFになってしまっているが。

本作は,日本の古い家(建物)にまつわる怪奇現象をテーマとした短篇集だ。前の長編の「残穢」と比べると,比較的ライトな感じ。「残穢」は怖かったからなぁ。買ってから一月も放ってあったのは,その影響(トラウマ?)も大きい。そういう意味では,怖い話が苦手な人でも充分楽しめる作品といえるだろう。そうは言っても,ところどころで軽くゾワッと鳥肌が立ってしまうのだが。

それにしても,改めて思うに,小野さんの文章は,こういう古い家や田舎の町並みの描写にぴたりとハマる。これを今風の作家の文体で書かれても,生々しいほどの情景が目に浮かぶことはないだろう。そして,何気ない会話を含めた,人の気持ちの描写が極めて細やかで,物語に自然に引きこまれてしまうのである。だから余計に怖く感じるのかもしれない。

それぞれのエピソードで,問題の解決に当たるのは,「営繕かるかや」の尾端という人物。この人は,「ゴーストハント」のナルちゃんや,その他よくあるホラーの主人公のように,悪霊を退治するための特殊能力を持つスーパーマンではない。ただ現象を適切に読み取って,無理なく自然に流すようにして,現象を鎮めるのである。悪しきものを退治して,消し去って,めでたしめでたし,というような安易な怪談ものに比べて,「大人の怪談」というのがぴったりだと感じた。純粋に物語として,味わい深い。よっぽど怖いものには弱い人でなければ,多くの人にオススメしたい作品である。

全6篇の中で,個人的には,特に「雨の鈴」が気に入った。ちょっとミステリー・タッチなせいかも知れない。小路の形状を把握するのに,何度も読み返してしまった。小野さんの旦那さんの綾辻行人さんの作品のように,小路の平面図があれば良かったのだが^^;

なお,「営繕かるかや怪異譚」は,現在も雑誌「幽」で連載が継続中とのこと。季刊のようなので,1冊分たまるには時間がかかるだろうが,続刊が期待できそうなので楽しみだ。


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