アキバのホコ天

秋葉原の歩行者天国が，今度の日曜から半年間，試験的に再開されるらしい。

2008年の殺傷事件が元で中止されていたものなのだが，そもそもこれ自体が短絡的な発想だ。どうして歩行者天国がなければ再発を防げるといえるのか，合理的な説明がまったく見当たらない。ちょっと調べてみると，事件前から，ホコ天で行われていた路上パフォーマンスやゲリラ・ライブによる，風紀の乱れや治安低下などが問題視されていたようで，地元住民の不満や不安が高まっていたらしい。要は，事件が起きたのを大義名分に，ホコ天中止に踏み切った，というのが真相だろう。別件逮捕と同じようなもんですな。これじゃ合理的な説明がないのも当たり前だ。

実際，再開に当たっては，路上パフォーマンスなどが禁止されるらしい。街には監視カメラが各所に設置され，治安維持対策も万全ということのようだ。しかしねぇ，心を病んで，明確な意志で人を傷つけようと思っている人間，捕まってもいいと思っているような人間にとっては，どちらも有効な対策にはなりえないでしょ。

もちろん，路上パフォーマンスやゲリラ・ライブで治安が悪化するのが不安だという，地元住民の心情は理解できる。でも，それなら例の事件を持ち出すのはフェアではない。事件との直接の因果関係があるわけではないのだから。路上パフォーマンスを禁止したいのであれば，その点を明確にして議論を尽くすべきだ。でなければ，本当の意味での世論の支持も得られないし，当事者双方が納得することもできないだろう。マスコミも事件との関連性ばかりを強調しているが，マスコミが論理性を欠いたらおしまいである。まぁ，すでに日本のマスコミは終わっているとも言えるが。

利用者の立場から言わせてもらえば，アキバにホコ天がないのは不便で仕方がないんだよね。あそこは信号が長すぎるし。車なんてほかに通る道があるわけだし，もうちょっと歩行者の利便を考えてもらいたいもんだ。そもそも，あんな狭い歩道に，人がギュウギュウひしめき合っている現在の状況の方がよっぽど危険だと思うんだけどねぇ。交通事故もそうだけど，人混みに紛れて...とかね。そういう想像力は働かないんだろうか。愚かな話だ。