SSブログ

恐るべき冤罪の創出過程 [本]

冤罪と裁判 (講談社現代新書)
「冤罪と裁判」(講談社現代新書)

書店を流していて,興味深いタイトルが目についた。「冤罪と裁判」という講談社現代新書の1冊。手に取ってみると,冤罪と思われる実際のケースが,それぞれ詳細に紹介されている。面白そうなので,(書店ではなく)hontoですぐに注文した。

まだ読み始めて数十ページなのだが,いきなり衝撃的な例の連続。決して遠い過去の話ではなく,2000年以降のこと。いかに不適切で違法な取り調べが,警察によって行われているかが分かる。勿論,著者がその場にいて見聞きした訳ではないから,全てがありのままの事実なのかは分からないが,弁護士の方なのでそこそこ信憑性があると考えて良いだろう。驚くべきは,逮捕状のない,任意の取り調べに強制連行することがあるということ。これは明らかに,職権逸脱の違法行為だ。恐らく,この強制連行に下手に抵抗すると,伝家の宝刀,公務執行妨害を適用して逮捕するのだろう。それすらも視野に入れて,敢えて手荒なやり方をするのだと思われる。そして,連行したあとは,任意なのにも関わらず,帰宅を許可しない。これって,警察による誘拐・監禁行為ではないか? 取り調べにあたっては,刑事は大声を出し,暴言を吐き,机を叩いたりするなどして,威嚇して脅すのだ。しかも,相手は,犯罪組織などの構成員ではなく,一般市民だ。勝手に警察が犯人だと思い込んでいるだけで,実際は善良な一市民なのである。

この恐喝まがいのやり方に屈して,虚偽の自白をしてしまう人がいる一方で,違法性を盾に応じないと,人権を無視したとんでもない捜査をする。まだ立証もされていない罪を,被疑者の親族・知人や関係する組織などに吹聴して周り,煩わせる。その結果,結局立件できないとしても,被疑者の社会生活を破壊する。そして,そこには無責任なマスコミの報道も介在する。

こうしたことは,ある程度想像していた範囲ではあるのだが,実例として突きつけられると,背筋が凍るような気分だ。TVの刑事ドラマよりもよっぽど酷い。任意の事情聴取など応じる必要がないと思っていたのだが,強制連行があり得るとは。そして,その違法性を訴える先がないというのがおかしい。弁護士が抗議してもダメってどういうことなんだ? 日本の警察組織は,ここまで腐っていたのか。そりゃ,日々本物の犯罪者とばかり関わっていたら,人間不信にもなるのかもしれないが,人間を信じられない連中が,正義を預かるなんて,正気の沙汰ではない。警察に目をつけられたら終わり,なんて,近代国家として恥ずべきことなのではないだろうか。

いつも書いているが,こうしたことは,決して他人事ではない。何しろ,冤罪なのだから,罪を犯してないからといって無関係とは言えないのだ。果たして,現状の日本の司法制度で,個人が警察に立ち向かうための有効な手段があるのだろうか。この本からそうした洞察が得られるかは分からないが,冤罪に導かれるパターンを,多くの実例から学んでおく意味はあるだろう。

これから読み進めるのが,楽しみであり,恐怖でもある。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。