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効かない薬 [時事/評論]

今日の治療薬2011
南江堂「今日の治療薬2011」。ダーゼンが載ってるか知らないけど,結構専門的な本らしい。ちょっと面白そう。高いけど買ってみようかな。

1968年に発売され,40年以上にわたって使用されてきた処方薬,「ダーゼン」が販売中止になり,自己回収されるというニュース。

ダーゼンは,痰を出やすくしたり,腫れを和らげるなどの名目で,風邪の時などによく処方される薬のひとつ。主成分はセラペプターゼで,武田薬品工業が発売していた薬だ。特許は既に切れていて,各社からジェネリック薬品も発売されている。私も名前を覚えていたほどだから,比較的頻繁に処方されたことがあったのだと思われる。2009年度の国内販売実績は67億円とのこと。といっても,これが多いのか少ないのかさっぱり分からないが。

今回の措置は,薬事・食品衛生審議会の医薬品再評価部会の審議結果を受けてのもの。ダーゼンとプラセボ(偽薬)を与えたそれぞれのグループで,症状が改善した割合に有意差がなかったということらしい。勿論,有意差がなければ即薬効がない,と断定することはできないので,再評価部会でも議論持ち越しとなった(参議院議員・辻泰弘氏の公開しているPDFより)模様だが,武田薬品工業側では有効性を証明する目処が立たないと判断したようだ。

しかし,40年も使われてきて今更とは...。ただ,以前からその効能を疑問視する声はあったようだ。海外ではほとんど使われていなかったという話もあるみたい。では,何で日本ではこんなに使われてきたのか。確かに,風邪のような症状に対して処方しても,自然治癒してしまうこともあるだろうし,いくつか併発している症状のひとつに過ぎないこともあり,本当に効果があったかどうかを臨床の現場で判断するのは難しいだろうけどね。

そういう場合,効果があったと見るか,なかったと見るかは,医師の考え方次第。別に害がないなら,取り敢えず出しておこう的な処方をする医師もいるだろう。製薬会社のプロパーに頼まれて入れてるケースもあるだろうし。こういうことになってしまうと,ダーゼンを何の疑問もなく処方していたような医者は,医師として信頼できるのか,って話になってしまうよね。喉が赤いから消炎剤,痰が出るからダーゼン,念のため抗生物質も出しておきましょう,なんてのだったら,ガイドブックさえあれば誰でも処方できそうだ。

ところでこの,「医薬品再評価」とは,「すべての医療用医薬品の成分(処方)を原則として5年ごとに見直す定期的な再評価と、これを補う臨時の再評価とからなる制度として、昭和63年から開始された制度」なのだそうだ。薬事・食品衛生審議会の活動記録のページを見ても,議事録は2004年分が最後だし,どのくらいの頻度でどれくらいの活動をしているのかよく分からない。議事自体は非公開みたいだし。いっちゃ悪いけど,これじゃ何やってたってわかんないよね。企業機密の保護とかいってるけど,税金使ってるクセに,こんな不透明な運営が許されるのか? 因みに,2004年の議事録を見てみると,こりゃ完全なスクリプト。喋ったことが一字一句(まぁ補正は入ってるだろうけど)書かれている。民間では,こういうのを議事録とは言いませんな。

今回調べていて初めて知ったのは,厚生労働白書がWebで公開されていること。こういうのって,図書館や,たまに書店で見かけるけど,紙でしか存在しないものだと思ってた。まぁ,行政がやったことを国民に報告するのに,金を取るってのは本来筋が通らない気もする。で,各年度の資料編の,「医薬品・医療機器の製造販売後対策」の中に「医療用医薬品再評価結果一覧表」が含まれている。数しか載ってないけど。これ見ると,「有用性が認められない」薬って,凄い数なんだねぇ。びっくり。たまたま「ダーゼン」がメジャーだったから騒がれただけなのかな。「有用性が認められな」かった製品の一覧って,どこかで公開されているんだろうか。激しく興味があるんだけど。

しかし,これまで薬効のない薬に金を払わされていたのかと思うと,腹が立ちますな。医師が意図的にプラセボを処方したのでない限り,薬でないものを服まされていたなんて,詐欺みたいなもんだ。それに,副作用のない薬はないわけで,我々患者はリスクだけを背負わされていたことになる。医師のすることは,良かれと思ってしたことであれば,結果に関わらず責任を問われないという話を聞く。これは,あくまで高い正義感と倫理観を前提としたものだ。漫然と,典型的なパターンに基づいて処方されたのではかなわない。今一度,人の命と健康を預かっているのだということを再認識して欲しいものだ。

ふと思ったのだが,プラセボを投与する時って,保険点数はどうなるんだろうね。本物の薬に比べたら値段も安いだろうから,それで分かっちゃったりしないのだろうか。


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