落合前監督の「采配」

落合博満著，「采配」(ダイヤモンド社)。

楽天の期間限定ポイントの期限が来ていたので，それを使って，落合前ドラゴンズ監督の本「采配」を買ってみた。

基本的に，ビジネス書とか自己啓発本とか，一切読まないのは以前も書いた通り。ただ，落合という人については，選手時代から監督時代を含めて，言ってることやってることに，共感できる部分が多かった。日本人は建前の綺麗事や，優等生発言が好きなので，何かというと悪者にされがちだが，彼の言動はいちいち理に適っている。マスコミの情報操作も功を奏したのだと思うが，そんなことに踊らされているうちは，日本人の民度など上がりようがないだろう。

それはともかく，落合の本だからといって，私がこれにビジネス書としての価値を認めている訳ではない。私が知りたいのは，むしろドラゴンズ時代の裏話である。監督時代の落合は，マスコミに対して寡黙だったので，報道された様々な表面的な事象に対しての，落合の考え方を確認しておきたいと思ったのだ。まだところどころつまみ食いで読んだだけだが，世間をあっと言わせた，川崎の開幕投手起用の話など，なかなか興味深いものがある。

とはいえ，ダイヤモンド社が出している以上，あくまでもビジネス書であって，ドラゴンズのファンに向けたものではない。ドラゴンズ時代のエピソードを紹介した後で，いちいち一般的なビジネスの話に言い換える部分は，極めて鬱陶しい。っていうか，そのくらい，読者に自分で読み解かせればいいだろうに。今時こういう本を読む人には，懇切丁寧に答まで解説してあげないと分からないのだろうか。これまた「社会の過保護化」の現れのひとつと言えよう。それで字数を稼いで，余白も多く，装丁も大したことないのに1575円はちとお高いですな。

まぁ，ドラゴンズの黄金時代を築いた前監督への，感謝の気持ちだと思えば高いものではないが。開幕3連戦を2勝1分で，高木新監督もさぞかしご満悦のことと思うが，いくら表面的に落合色を一掃したところで，選手の中には落合が培ったものがまだまだ残っているとうことを忘れてはいけないだろう。