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粒子であり波である [本]

「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる! (PHP文庫)
「量子論」を楽しむ本
PHP文庫/Kindle版

Kindleストアのセールで少し安くなっていた,「『量子論』を楽しむ本」というのを買ってみた。理系の人間なのだけど,「量子」には全く馴染みがない。大学の授業にあったかな? 単に聴いてなかっただけだろうか? 何だか訳の分からない理論,というイメージしかなかったのだが,何も分からないままというのも癪に障る。書評を見ると,難しい数式を使わず,量子論のイメージを比較的分かりやすく説明しているとのことだったので,ちょっと興味をそそられたのである。

読み終わってどうだったかというと,やっぱり量子論はよく分からない。電子は粒であり,波でもある,と言われても,絵が頭に思い浮かばない。そもそも,「波」の概念が,今まで見知っていたものとは違うようだ。媒質の動きや密度の変化とで伝わる「波」とは違うみたい。しかし,高校の物理で習ったような,波の性質は歴然として持っているという。2つのスリットに向けて1個の電子を発射した時でも干渉が見られる,ということに至っては,従来の常識では理解不能。2つのスリットに1つの電子なのだから,どちらか一方しか通らないはず。これが疑いなく真でないとすると,推理小説の謎解きなんて不可能になってしまうだろう。

納得できないのは,普段目に見えている世界の物理現象と,あまりにかけ離れているからだ。ただ,物質は全て波の性質を兼ね備えているが,そのサイズが大きいと無視できる程度になってしまう,という説明で,少しすっきりした。電子のようなミクロの粒子になると,相対的に波の性質が強く出てくるらしい。ミクロとマクロで,挙動の原理が全く異なると言われると信じがたいが,これなら一応辻褄は合う。

粒と波の性質を併せ持つということについても,マクロの世界にないからイメージできないだけで,我々の想像を超越した状態というのがきっとあるのだろう。見てない時は波で,見ると粒になってしまう,というと,いかにもインチキくさいが,観測をするという行為が,ミクロ・レベルでは,光の反射などにより,観測対象に何らかの影響を与えるのだ,と言われれば説明は付く。

ここまでは何とか付いてこられたのだが,不確定性原理辺りからどうも怪しい。観測が影響を与えるから,波の状態を正確に測定できないのはいいのだが,なぜそれが,量子論的には何事も不確定,ということになってしまうのだろう。論理に飛躍がありすぎる。粒子が分裂して,逆回転にスピンする2つの粒子が出来た時,片方を観測した瞬間に,もう一方のスピンの向きも分かる,という。つまり,観測するまでは,どちらのスピンの向きも不確定だ,というよく分からない論理。で,一方のスピンの向きが決まると,もう片方まで1光年の距離があっても,瞬時にその情報が伝わって,向きが確定するのだという。なんのこっちゃ。シュレーディンガーの猫もそう。放射性物質の崩壊で,箱の中の猫が死ぬ,という装置で,箱を開けて観測するまでは,猫は生きてもいるし死んでもいる,というやつ。この話で,放射性物質が崩壊しているかしていないかも,観測するまで決まらない,というのが理解不能。ほっとけば自然に崩壊していくもんなんじゃないの? なんでそこが不確定じゃないといけないのか,電子の波の議論からどう繋がっているのかが分からない。

一般向けに分かりやすく説明するのがこの本の趣旨なので,途中の議論をはしょっているだけなのかも知れない。量子論のようなものを,薄っぺらい一般向けの本を1冊読むくらいで,ちゃんと理解出来る訳もないのだろう。ただ,読む前に比べて,ほんの少しだけ,理解が進んだような気がする。取っつきにくそうな量子論の世界を,予備知識なしに垣間見られるという点では,なかなかの良書なのかも知れない。といっても,他の本を読んだことはないのだけど。せっかくなので,この本をウォーミング・アップとして,他の本も読んでみたい気分になってきた。

パラレル・ワールドとか,SFのような話が出て来てしまうのに抵抗はあるのだが,今の科学レベルでは,すっきり説明できないような自然界の真理というものが,きっとあるのだろうね。とはいえ,今の常識に凝り固まった頭で,全て受け入れようとすると,気が変になりそうなので,無理のない部分だけ理解出来たように思っておけばいいのかも。どうせ完全に理解出来ている人はいないという話だし。

量子論にも匹敵する,物理学上の大発見が,またいつかきっとあるのだろうな。そうしたら,量子論をもっと自然に理解出来るようになるのかも知れない。それが死んだ後だったら悔しいなぁ。


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