フィクションの境界 [本]
東野圭吾著「夢幻花」 |
東野圭吾の最新刊,「夢幻花」読了。
黄色い朝顔をめぐるミステリー。朝顔には黄色の花を付ける種類は現存しないそうだ。江戸時代にはあったのだが,どういう理由か絶えてしまったらしい。以来,黄色い朝顔を再現しようと,様々な努力がなされてきたが,未だ成功には至っていないのだとか。恐らく,そこから先が,東野氏による創作なのだと思うが,どこからがフィクションなのか分からないという,見事なフィクションである。どうせフィクションなのだからと,科学的な説明をおろそかにする作家も多いようだが,そこは理系出身の東野氏ならではの精密さだ。しっかりとした調査・取材をしているのだろうと想像が付く。やはり,プロはこうあるべきだろう。
ストーリーの構成が,これまた秀逸。出足から,繋がりの見えないいくつかのエピソードが紹介されて,当然どこかで繋がっていくのだろうと思いつつも,終盤に至るまで見えてこない。しかし,それらを漏らさず,最後に一本の糸により纏めてしまう技術は見事である。
ただ,私の好きな,社会問題を扱う作品ではないので,内容的には薄い感じはする。若干,若者向けの説教くさいテーマも読み取れるが,さすがにこの歳では響いてこない。まぁ,そんな面倒臭いことを考えず,読み物として楽しむには何の問題もないだろう。GWの終盤,特に出掛ける予定がないのなら,自宅で爽やかな5月の風を感じながら,読書に耽るのもよいのではないだろうか。
2013-05-01 11:31
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