SSブログ

フィクションの境界 [本]

夢幻花(むげんばな)
東野圭吾著「夢幻花」

東野圭吾の最新刊,「夢幻花」読了。

黄色い朝顔をめぐるミステリー。朝顔には黄色の花を付ける種類は現存しないそうだ。江戸時代にはあったのだが,どういう理由か絶えてしまったらしい。以来,黄色い朝顔を再現しようと,様々な努力がなされてきたが,未だ成功には至っていないのだとか。恐らく,そこから先が,東野氏による創作なのだと思うが,どこからがフィクションなのか分からないという,見事なフィクションである。どうせフィクションなのだからと,科学的な説明をおろそかにする作家も多いようだが,そこは理系出身の東野氏ならではの精密さだ。しっかりとした調査・取材をしているのだろうと想像が付く。やはり,プロはこうあるべきだろう。

ストーリーの構成が,これまた秀逸。出足から,繋がりの見えないいくつかのエピソードが紹介されて,当然どこかで繋がっていくのだろうと思いつつも,終盤に至るまで見えてこない。しかし,それらを漏らさず,最後に一本の糸により纏めてしまう技術は見事である。

ただ,私の好きな,社会問題を扱う作品ではないので,内容的には薄い感じはする。若干,若者向けの説教くさいテーマも読み取れるが,さすがにこの歳では響いてこない。まぁ,そんな面倒臭いことを考えず,読み物として楽しむには何の問題もないだろう。GWの終盤,特に出掛ける予定がないのなら,自宅で爽やかな5月の風を感じながら,読書に耽るのもよいのではないだろうか。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。