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「脳男」に感動なし [本]

脳男 (講談社文庫)
首藤瓜於著「脳男」

Twitterにも書いたが,首藤瓜於の「脳男」を読んだ。

映画になったということで話題になってたのと,江戸川乱歩賞受賞作ってことで,ちょっと前から気にはなっていた。しかし,Amazonのレビューを見ると,あまり好意的なコメントが載ってない。評判が悪いものを,わざわざ読んで時間を無駄にすることはないかと思って,やめたのである。それを翻すことになったのは,Koboの500円クーポン。2枚あって,1枚はすぐに使い途が決まったのだが,もう1枚に困ってしまった。しかも,気が付いたのが,クーポンに書いてあった期限が切れたあと。慌てて1枚目を試してみたらまだ使えたので,残り1枚も早く使ってしまいたい。そんな訳で,すぐに思いついた「脳男」を購入した訳である。といっても,クーポンの額面ぴったりだったので,支払いは0円。

ちょうど「正義のセ」の2冊めを読み終わって区切りも良かったので,すぐ読んでみることにした。で,これまた2時間ほどで読了。最近の小説って,文体がライトなせいか,読み進むのが早い。なんか損してるような気がしてしまうのは,貧乏性だろうか。

それはともかく,内容の方だが,どうも今ひとつ印象的ではない。まず,そもそも「脳男」って何なのか。結局,読み終わってもよく分からなかった。生まれながらに感情がないのが脳男? 本当にそういう症例があるのか,全くのフィクションなのかもはっきりしない。フィクションなのだとしたら,もっともらしい医学的考察の部分は,著者の妄想の産物なのだろうか。逆に,実例があるのだとしたら,綿密な取材に基づいていることが分かるような記述をしてくれないと,そういう風には読み取れない。その辺が曖昧なので,理系人間の思考回路では,イマイチ白けてしまうのだ。それに,何故そういう設定が必要だったのかもよく分からない。感情がない人間の犯行だったことが分かったから,どうだったというのだろう。ミステリーには必須と思える,そういった論理性が感じられないのだ。読者の気付かぬ内に,縦横に張られた伏線,というのに唸らされることもなかった。江戸川乱歩賞の選考で絶賛されたそうだが,どの辺りが選考委員の心の琴線に触れたのだろう。私には全く想像がつかない。

さらに言えば,重要な登場人物に,全く人間的な魅力を感じられない。主人公らしき刑事は,頭脳明晰で素晴らしい推理を展開する訳でもないし,人情味溢れる熱血漢という訳でもない。ただ身体がデカくて,暴力的で粗野な感じ。ハードボイルドだとしても,主人公の器ではない。女医さんはもう少しマシかもしれないが,キャラクターに取り立てて個性が感じられないのは同様。犯人に至っては,善なのか悪なのかはっきりせず,敵役なのか同情すべき人物なのか微妙。そんな感じで,登場人物に思い入れが持てないのだ。これは,小説として致命的なことなのではなかろうか。

いくら努力しても,先に読み進めるのが困難,という作品ではないので,人によってはこういうのを面白いと感じるのかも知れない。私の読み方が良くないのかも知れない。私も,つまらない作品だとまでは言わないが,読み終わって何も残らなかったことは事実。これをこのまま映画化して,面白くなってるのだろうか。まぁ,映画は映画なりに脚色が入っているのかも知れない。ただ,原作を超える映画は記憶にないし,まず観ることはないだろうが。


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